先日、何気なく本屋に立ち寄った際、新刊コーナーに平積みされている本の中に『時代とフザケた男』という一冊の本を見つけました。著者は俳優の小松政夫さん。私は『お笑い』が大好きで、テレビでもコントや漫才などのネタ番組は欠かさずチェックし、またネットの動画でも、過去のお笑い番組を中心に暇さえあれば見ています。小松政夫さんは、日本を代表する喜劇俳優で、伊東四郎さんと組んでの『電線音頭』や『しらけ鳥』などで日本に一大ブームを巻き起こしたことは、直撃世代ではない自分でもよく知っていました。テレビの創成期からお笑いを支えてきたレジェンドが書いた本ということで、私は内容もよく確かめずに、いわゆる『ジャケ買い』のような感じでその本を購入しました。
家に帰って早速その本を読み始めると、さすが喜劇人という軽妙な語り口でスルスルと読めてしまい、正味2日で読破しました。で、その内容ですが、小松さんの長い芸能生活の中で出会った数多のスターたちとのマル秘エピソードを、面白おかしく、そして小松さんらしい飾らない文体で存分に語ったものです。そしてそのスターたちと言うのがモノスゴいメンツで、『高倉健』、『勝新太郎』、『藤田まこと』、『松方弘樹』、『吉永小百合』などなど、もう『昭和芸能史』そのものと言っても過言ではありません。いろんなスターたちと共演を重ね、可愛がられてきた小松さん。その人柄が想像できて、それぞれのエピソードを読みながら、なんだか微笑ましい気持ちになりました。
この本の中で、小松さんはたくさんのスターについて語っていますが、中でも一番感慨深く語っているのが、誰あろう『植木等』についてです。植木さんのことは、若い方でもご存知の方が多いと思います。あのコミックバンド『クレージーキャッツ』のメンバーであり、映画『無責任シリーズ』などで数多くの主役を演じ、昭和のお笑い史に一時代を築いたレジェンド中のレジェンドです。小松さんの芸能生活は、この植木さんの付き人になることから始まりました。小松さんは博多から役者を目指して上京するも、お金がなくて横浜トヨペットのセールスマンになりました。しかし役者への夢をあきらめきれずにいたところ、雑誌で『植木等の付き人・運転手募集』の三行広告を見つけて思い切って応募。応募者千人の中から見事当選し、晴れて植木等の付き人となりました。その後、植木さんを陰から支えながら、徐々に映画や舞台での共演も増えてゆき、いつしか小松さんは植木さんの事を『オヤジさん』と呼ぶようになりました。このあたりの詳しい話は、現在放送中のNHKドラマ『植木等とのぼせもん』で描かれているので興味のある方は是非。
植木さんと小松さんの交流は植木さんが亡くなるまで続き、植木さんの葬儀では小松さんがこう弔辞を読んだそうです。
「四十数年仕えてきたことは一生の誇り、植木等は日本の宝です。この誇りを一生大事にして生きていきます。」
師弟の強い絆が感じられ、胸が熱くなる言葉です。
小松さん、いつまでも長生きして、私たちをずっと笑わせてくださいね。
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