『アシスト』の美学

 私はスポーツ観戦をする時、昔からの癖で、得点シーンではなくその直前の『アシスト』シーンについつい目がいってしまします。サッカーでもゴール前の味方にドンピシャのタイミングでセンタリングを上げるプレイにうなったり、バスケットボールでもノールックパスやビハインドパスの華麗さに興奮したりと、人とは盛り上がるポイントが若干ずれている気がします。ファンになる選手も渋くなりがちで、アメリカのバスケットボールリーグ『NBA』の選手でも、友達が『マイケル・ジョーダン』などのビッグネームに熱を上げる中、私一人だけ地味な『ジョン・ストックトン』という選手を一押ししていました。この選手は身長185cmと小柄で派手なプレイはありませんが、何度も年間最多アシスト王に輝き、さらに歴代最多アシストの記録も持つNBAの歴史に名を残す名プレイヤーなのです。

 そもそも『アシスト』とは英語で『Assist』と書き、意味は『手伝う』『援助する』というものですが、自分のこれまでの人生を振り返ると、アシスト的な役回りが非常に多かったように感じます。人前に立ってプレゼンしたりするより、資料作りの方が性に合っていたり、飲み会でも幹事役がよく回ってきたり――よく考えたら今も麻雀同好会で幹事をやっているので、これはもう筋金入りのアシスト人間なのかもしれません。

 多くの人は『アシスト』のような裏方ではなく、『主役』として舞台の真ん中でスポットライトを浴びて活躍したい、と思っているでしょう。しかし実際は、先頭を切って皆を引っ張るリーダーよりも、リーダーを支え、組織全体に気をくばりながら裏方に徹するナンバー2の方が組織の実権を握っている例が少なくない気がします。自分の手柄よりも相手を優先する姿勢は、周りからの人望が集まりやすいですし、組織を円滑に進めようとする気遣い、心くばりはどこに行っても重宝されます。そもそもアシストというものは、視野が広く、組織全体が見えてないとできません。相手の状態、立場、組織全体とのバランスを考えながら、ベストのタイミングで手を差し伸べる、これがアシストの本質であり醍醐味なのです。これは自己中心的な人間には決して出来ない芸当です。

 

 人生の『主役』になりたいあなた、たまには『アシスト』役に回って、その重要性や面白さに触れてみてはいかがでしょう。視野が広がり、何か新しいものが見えてくるかもしれませんよ。

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