麻雀史研究書『麻雀の誕生』

 先日、ふらりと入った書店で『麻雀の誕生』という本を目にしました。前にもここで書いたように、私は麻雀が大好きなので、とりあえず手に取りパラパラとめくってみると、その内容はよくある『読めば麻雀が強くなる』と謳った指南書の類ではなく、どうやら本格的な麻雀研究の書であるらしい。その場でアマゾンのレビューを確認するも、発売から1か月近く経っているにもかかわらずレビュー数が0件。かなりマニアックな本のようで、ますます内容が気になった私は、2,300円と少々高額でしたが思い切って購入。正味2日で読破しました。

 で、読後の感想ですが、なかなか読みごたえがあって久しぶりにためになる本を読んだ、という気持ちになりました。

 その内容は、麻雀というゲームがいつ頃誕生したのかを、中国、日本、アメリカの文献を綿密に読み解きながら探っていくというもので、おそらく日本で初めて麻雀の歴史を体系的にまとめた本であろうと思います。著者は大谷通順氏。中国文学者であり北海学園大学で教授として教鞭を執られている方らしく、特に中国のエッセイ、小説、新聞記事などをかなり詳細に読み解いており、さすがの博識ぶりを披露しています。

 この本を読んで一番驚いたのは、実は麻雀の歴史を中国の文献でさかのぼると、19世紀後半以降の文献にしか麻雀というゲームが登場しないという事でした。つまり麻雀とは、たった100年ちょっと前に生まれた非常に歴史の浅いゲームだったのです。私は、麻雀というものは紀元前から脈々と中国で受け継がれてきたゲームのように、何となく思ってきました。しかし実際に文献を紐解いてみると事実は違っていたのです。

 麻雀の歴史を簡単にまとめると、

①19世紀後半、もともと中国で遊ばれていた中国式ドミノゲームと中国式カードゲームをもとに麻雀が作られる。この時、まだ『麻雀』という名前は付けられていない。

②1920年代、麻雀は海を渡りアメリカに持ち込まれ、そのエキゾチックな雰囲気がセレブに受け、紳士淑女のたしなみとして大ブームを起こす。この時、アメリカ式の呼び名やルールがいくつか乱立する。

③アメリカでのブームを後追いで紹介する形で日本の雑誌や新聞コラムに麻雀のルールが掲載され、日本でも麻雀が広く知れ渡り、やがて日本全土に普及してゆく。その過程で『麻雀』の呼び名が確立する。

このようになります。これを見ると、日本における麻雀の普及には、アメリカでのブームが必要不可欠であったことが分かります。

 また本書は、麻雀で使われるマーク(『ピンズ』、『ソーズ』、『マンズ』)の由来などにも例を挙げて言及しており、個人的にはとても説得力のある説だと思いました。

 

 麻雀が好きでよくプレイする私ですが、実は麻雀そのものについて何も知らなかったのだ、という事を本書を読んで改めて思い知ることができました。

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