③北の夕鶴2/3の殺人
警視庁捜査一課刑事・吉敷の所へ、青森署から『ゆうづる9号』で死んだ女の身元を調査するよう捜査協力依頼が来た。しかもその女の服装は上野駅で見かけた別れた妻・通子と同じものだった。急ぎ青森へ向かう吉敷。しかし事件は釧路での密室殺人、夜鳴き石と雪の夜に現れる鎧武者の怪へと繋がっていき、その様相は混迷を極めてゆく――。度肝を抜く大仕掛けのトリックがなんとも島田荘司らしい初期の傑作。吉敷と通子のラブロマンスも見どころです。
④奇想、天を動かす
浅草の商店街で、400円の買い物に対する消費税を要求されたことに腹を立て、浮浪者風の老人が店員の女性を刺し殺す事件が発生した。老人を取り調べる吉敷だったが、その老人の様子に違和感を覚えて独自に事件の調査を行う。そして懸命の捜査で暴かれた老人の過去には、人知を超えた大犯罪が隠されていた――。自身の『本格ミステリー論』を実践に移すべく書き下ろされた本作は、本格推理と社会派推理を見事に融合させた名作です。
⑤異邦の騎士
一切の記憶を無くした男が、一人の女性と出会い恋に落ちる。慎ましくも幸せな生活を送る中、失われた過去の記憶が浮かび上がり、男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか――。島田作品の中でも断トツの人気No1を誇る感動作。私も結末で図らずも泣いてしまいました。
⑥アトポス
ハリウッドに血でただれた顔の『吸血鬼』が出没し、ホラー作家が殺され、嬰児が次々と誘拐される。そして女優・松﨑レオナの主演映画『サロメ』の撮影が行われる死海でも次々と不可解な惨劇が起こった――。90年代のミステリーを代表する大作。複数の物語が結末で一気に立体的に組み上がる快感がたまりません。
⑦龍臥亭事件
御手洗潔が日本を去って1年半。友人の石岡は、突然訪ねてきた二宮という女性の頼みで、岡山県まで悪霊払いに出かけた。2人は霊の導きのままに、『龍臥亭』という奇怪な旅館にたどり着く。そこで石岡は、世にもおぞましい大量連続殺人事件に遭遇した――。ホラーテイストと不可能犯罪の取り合わせが魅力的な本作。またこれを読めば、昭和の猟奇殺人事件史にも詳しくなれます。
島田荘司作品は主に講談社文庫と光文社文庫から発刊されています。大まかに、講談社文庫は御手洗潔シリーズ、光文社文庫は吉敷刑事シリーズと把握しておけば問題ないでしょう。また御手洗潔シリーズは、時系列順にキャラクターが増えていくので、できるだけ発表順に読んでいくことをお勧めします。
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