以前もここで書きましたが、私は推理小説が大好きです。中でも『古典』と呼ばれる戦前戦後の推理小説がお気に入りで、時間があれば何度も読み返しています。
今回はその戦後推理小説を代表する名探偵『神津恭介』について書いてみようと思います。
名探偵・神津恭介は、高木彬光原作の推理小説の登場人物で、江戸川乱歩の明智小五郎、横溝正史の金田一耕助と並び『日本三大名探偵』の一人に数えられています。しかし前の二人に比べていまいち知名度が低く、ご存知ではない方も多いのではないでしょうか。そんな『神津恭介』とは、どんなキャラクターなのか。簡単なプロフィールを挙げてみます。
『職業は東京大学医学部法医学教室助教授。長身の美男子。医学と理学の博士号を持ち、英独仏など6カ国語を操る天才。ピアノの腕前もプロ級。』
もう超がつくくらいの完璧人間。今なら福山雅治主演でドラマが作れそうな感じです。そんな天才である彼と超がつく凡才の友人・松下研三がコンビを組んで、さまざまな難事件を解決してゆくのが『神津恭介シリーズ』なのです。
それでは神津恭介が活躍する代表作を、簡単ですが3つご紹介します。
①刺青殺人事件
江戸川乱歩から激賞された、高木彬光の処女作にして神津恭介のデビュー作。密室状態の浴室から、胴体の無い女性の死体が発見されるところから端を発し、やがて不可解な連続殺人へと物語は繋がっていきます。被害者の背中に描かれた刺青が事件のカギを握る、ユニークな展開も見どころ。和製密室ものの名作です。
②人形はなぜ殺される
個人的には神津恭介シリーズの最高傑作。殺人を犯す直前に、なぜか本番そっくりに人形で予行練習をして見せる不可解な犯人。この『人形殺し』の謎が大きく立ちふさがり、さしもの神津恭介も今回ばかりは後手に回ることになります。『見立て殺人もの』としても『犯人当て推理小説』としても一級品。スリリングな展開と一撃必殺のトリックは、今読んでも色あせることはありません。
③成吉思汗の秘密
これまでの作品とは打って変わって、異色の歴史ミステリ小説です。入院中の神津恭介が、暇つぶしに『源義経=ジンギスカン』説の推理を始めた所から物語は始まり、次第に神津の推理は歴史の真実を暴いていきます。殺人などの犯罪は一切起こりませんが、神津に異を唱える同僚の助教授や神津を献身的に支える美人助手も登場して、読者を最後まで飽きさせない筆運びのうまさは高木彬光ならではです。
以上が、代表作3作品です。高木彬光の作品は、かつては様々な出版社の本が読めましたが、今では絶版も多く、読もうと思えば古本を探すしかありません。しかしここで挙げた3作品は、現在でも光文社文庫から出版されているので、興味があれば是非。
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