最近読んだ本・いつかパラソルの下で(森 絵都)

主人公はフリーターとして、その日その日を気ままに過ごしている。起伏のない生活を送り、そんな日々がこれからも続くのだろうと思っていた。

 そんな折、主人公が20歳の頃から一度として会っていない父親が、事故死をしたと知らされる。父に好感を抱いていない主人公は、さして動揺することもなく、父の死を受け入れ、家族だけでの葬式を執り行った。

 その後、1周忌を迎えるのだが、主人公とその母の前にある女性が現れ、その女性の発言が事の発端となり、父のあ然とする過去が次々浮かび上がる。

 まったくその話を信用しなかった主人公と母だったが、その話を兄妹にすると、「どうして黙っていたのか、真実を知りたい」と、父の生前を調べることに。すると、父の故郷、佐渡に住んでいた父の友人から父の驚愕する事実を聞かされることになる。

 主人公たち3兄妹は佐渡に渡り、父の過去を知るべく行動していく。はたして父はなにを抱えていたのか。そして、それを知った主人公たちは―。

父の「暗い血」を知った主人公たち3兄妹。生前、それぞれが父親に対する憤りや苦々しさを抱いていた。頑固で潔癖、良識の塊。そんな父親に育てられたら変わった人生を送るようになるのかもしれない。

 3人は、父親の影を追うことで、父親に封じられてきた何かを解消していく。父親の死から「自分探し」をする機会を得る格好になったとも言える。父親を許し、自分の過去を清算し、新たな一歩を踏み出していく。

 そんな主人公たちに、ある種の共感を抱きながら読み進めた。自分の過去を振り返ってみたり、これからのことを考えたり。物語とは直接関係ないことではあるが、自分自身の生き方について考える良い機会になった。

 誰かのせいにして人生を送ればそれは楽だろう。しかし、自分に原因があることまで誰かのせいにしていては、成長は望めない。

 もし親がいなくなったら、自分はどうなるのか。果たして一人前の人間として成り立つだろうか。否、ただただ混乱する生き方がしばし続きそう。独り立ちを目指す時期はもうすでに来ている。そろそろ、自分で自分を律して他力本願な性質を絶たなければならない。本に影響されるというのは幼稚なイメージを抱きがちだが、プラスに働いたので、良しとしたい。読んでよかった。

 

ゆうき

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