愛するＨｏｌｙへ

９年前に亡くなった愛犬Ｈｏｌｙを

悼んで作った詩です。

　　　もういいんだよ

お前は最期まで頑張ったね

丸一昼夜、だんだんと間隔のせばまってくるけいれんに絶えながら

噛みしめる歯の間にお前の舌ははさまれて傷だらけになりながら

口から垂れてくる涎は透明から血の色に変わっていった

私がうつで苦しんでいたとき、子犬のお前はいつも一緒に寝っ転がって顔をなめてくれた

雪まみれで次男とじゃれ合う姿は私の心をどんなに和ませてくれたことか

長男が上着を羽織るだけで、尻尾を振って散歩をするために玄関へとまっしぐら

お母さんが室内ウォーキングをすると、二本脚で嬉々として一緒に歩いた

いつもお前を山へ連れていってくれる私の友人が来ると、チャイムが鳴る前に喜びの雄叫び

あんなに元気だったお前が悪性リンパ腫という不治の病にかかっていた

三ヶ月近い闘病生活

お前はやせ細り指一本入るだけだった首輪に手のひらが入るようになってしまった

ろくに歩けもせぬのに便意をもよおすと玄関の方へ行こうとする

抱いて外へ出してやると草の上にへたりこんで便をする

何も食べられないのに、嘔吐とおしっこ、うんこはわずかながら何度も繰り返す

もう、家の中でしたって構わないんだよ

それなのに外へ出ようとする

最初のけいれんがやってきた

五体を振るわせ、歯をぎっしりと噛みしめている

その歯の間から血に染まった舌が見える

舌を口に入れてやろうとした長男の指がけいれんに絶えるお前の歯に噛まれてしまった

血のにじむ長男の指

そんなに歯を噛みしめなければならぬほどに苦しいのか

けいれんが起こる度に家族で「がんばれ」と声をかけた