「バッテリー」で一躍有名になった「あさのあつこ」の長編青春小説。
主人公は野球に没入している中学2年生。小学5年生のときに観戦した夏の甲子園大会に強く心揺さぶられ、野球にのめり込むようになる。
そんな野球が大好きな主人公が2年生になった年、自チームに投手がいないことが深刻な問題としてあがっていた。「どこかにピッチャー、いないかな」と、主人公は深く悩んでいた。
どうしても野球がしたい。できれば、甲子園にも将来出たい。あのグラウンドで野球を。そんな思いで始めた野球を、エースがいないという理由で辞めるわけにはいかない。どこかから探し出さないといけなかった。
そんな折、中学に転校生がやってくる。それも、元野球部員で、そのチームのエースだったという。主人公は当然、勧誘するも、まったく相手にさせてもらえない。なぜならその転校生は、野球部がらみで不登校になり、田舎のこの中学校に転校してきたのだ。野球どころか、外にも出たくないという。
バッテリーを組みたい主人公と、野球はできるが学校には行きたくない転校生。どうなってしまうのか―。
野球はピッチャーで成り立つ。その要がいないところから物語が始まる。
キャッチャーの主人公は熱血漢で、多少うっとうしい。「今すぐ野球をやろう!」と転校生にまくし立てていってしまう。そんな勝手な押し付けで学校どころか外にも出たくないひとをどうしろというのか。そっとしておけばいいのに。そう思って読み進めた。
しかし、「本気で、野球がしたい」と願い続ける主人公に転校生サイドの自分も気持ちがうわずってきた。不登校を否定するでもなく、「いっしょに野球がしたいんだ」、ただただ、そう思われることは、うらやましさすら覚える。主人公の心意気に感服する。
押しつけでもなんでも、「いっしょに野球を」という想いに、読んでいる自分も心打たれた。自分も転校生の立場でいたら、「よし、いこう」と思ってしまうかもしれない(・・・うらやましい。自分もこうだったなら)。それほどのアピールだった。
思いが強ければ強いほど、叶った時の達成感はなんとも表現しがたい気持ちになるし、自分にも、そこまで思える願いがあればいいのに、と思う。同時に、熱中することのすばらしさ、うらやましさをおぼえた。読んでよかった。
ゆうき
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