最近読んだ本・はるがいったら(飛鳥井千砂)

 主人公は行(ゆき)と園(その)。この二人を中心に物語は進んでゆく。

 ゆきは男の子だが、女っぽい自分の名前が嫌いな高校生。

 園は園で、珍しいことが理由で自分の名前が嫌いなデパートの受付嬢。

 そんな二人の日常を描いたこの作品。高校生らしく進路に悩んだり親友と大ゲンカをしたり。大人の女性らしく叶わないのに成就を願って不倫をしたり完璧な身なりを目指したり。日常がさらさらと流れていくのだが、深刻な問題もちらほら。最も重要な項目が、二人の両親が離婚しているという事。

 母に引き取られた園。父に引き取られたゆき。物理的にも離されることになったが、そんなふたりを精神面でつなげているのが、表題にもなっている「はる」という飼い犬。ゆきと園が公園に捨てられていた仔犬を拾い、「生死を預かる自信があるか」と問われて「死ぬまできちんと世話をする」と心に誓って飼うことにした、今では14歳になった老犬。

 排尿用に給水シートを自室に張り巡らせ、水分をたっぷりとひたした物しか食べることも出来ない老犬。そんなわびしい老犬がふたりを繋ぎ止めている。

進路と不倫。なるようになると考える行と、絶対的完璧主義者の園。ふたりはどんなことを日々思い、暮らしてゆくことになるのだろう―。

 

自分は園に、自分と似ている点を感じ取っている。名前が――とかも当然そうなのだが、そんなちっぽけなモノでなく、「なんでも完璧じゃないと納得がいかない!」という点。

嫌われ者の人生を送っているので、完璧じゃないと嫌われそうで不安だらけになってしまい、身動きが取れなくなる。

仕事だって「今日は完ぺきな身のこなしだった」と思えなかった日はかなりへこむ。でも、完璧だった日なんてそうそうない。結局は「まぁ、いっか。しかたない。」と思って眠りにつく。寝つきは良いのだ。

一日が園で始まり、行で終わる。「ちっぽけな人生」と思うが、それなりに満足はしている。これはこれでありな人生だ。

みんな「自分ルール」のようなものを背負って生きている。それを自分でどう受け止め、行動に移していくのか。そこに人生の真理があるような気がする。

大げさな話だと思うし、「フッ」と鼻で笑われるだろうが、「自分探し」みたいなことをしたがる人はそれを探しているのだろうし、実際たくさんそのような人がいる気がする。理由はひとつ、報われなくても納得できる人生を送りたい。それに尽きるのではないだろうか。

エンタメとナメなければ良かった。よくわからん心理になれます。ご一読を。

 

ゆうき

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