「海神の声 山神の声」

「海神の声 山神の声」

 

胸を撃たれて死んだ兵士は
心を撃たれて死んだ兵士
故郷への想いを撃ち抜かれ
愛する人への願いを撃ち抜かれ
傷口から すべてが飛び散らぬように
胸を押さえて死んでゆく

喉を切られて死んだ兵士は
言葉を切られて死んだ兵士
家族の名前も呟けず
平和の祈りも捧げられず
傷口から 悲しみだけを噴き出して
喉を掻き毟り死んでゆく

腕と足をもがれて死んだ兵士は
自由をもがれて死んだ兵士
思い描いた夢を掴めず
守り続けた祖国へ帰る術もなく
白い眼を必至で漂わせ
虚しさと悲しさにくれて死んでゆく

安逸に自惚れながら
瑣末な不満に俯きながら
生きながらえる
僕の耳に木魂する

名誉よりも
勝利よりも
ただ生還だけを願った

海神(わだつみ)の声
山神(やまつみ)の声

 上記は僕は20代の頃に書いた詩。僕のブログでは毎年8月15日に掲載している詩である。

 書いた動機は割合に不純でベトナム戦争映画のラストシーンを見てインスパイアされて書いたものだ。英雄映画なら主人公は無事に生還してハッピーエンドとなるはずであるが、この映画は最終的には主人公を含めた部隊は全滅してしまう。後味が悪いといえば悪いがそれが「戦争」というものだといえば間違いない結末に違いない。

 僕のおふくろは戦時中生まれで能登の片田舎で戦争を体験してきた世代だ。また歳の離れたおふくろの兄(叔父)はもとは船乗りで戦争に召集され輸送船に乗り込んでいたが、敵の船に撃沈されて戦死している。その叔父が僕と同じ名前でしかも、残されたたった一枚の写真を見ると、僕にそっくりなのだ。父方の祖父も戦地に赴き敵の銃弾を受けて肩の

ところに銃痕が残っているのを見せられたことがある。僕にとってもう60年以上前の戦争だとしても妙にリアルな疑似体験として体に染みついているのだ。

 その為だろうか。よく戦地に行って捕虜になっている夢をよく見る。閉ざされた空間。何時、処刑されるかわからない恐怖が夢の中で如実に再現される。目覚めると汗はびっしょり、喉はカラカラに乾いている。何度見ても恐怖と緊張に襲われる。

 

 詩のタイトルは書籍「聞けわだつみの声~日本戦没学生の手記~」を参考にしている。

僕はこの本を高校生の時に読んだのだけれど、志半ばにして戦地に赴かねばならなかった学徒の無念さを詩に書けたらなぁとずっと思ってきた。

きっかけがきっかけだったけれど、僕の中では一部分を切り取ることができたのではないかと思っている。

さてこれを読んで下さった方は何か感じてくれるだろうか・・・・。

 

粋夢

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コメント: 1
  • #1

    (金曜日, 30 8月 2013 12:48)

    感動しました。
    社会的なテーマを芸術として歌い上げていらっしゃる。
    見習いたいです。

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