この本は2編の短編で構成されている。ひとつは、「自分は捨て子なのだ」という根拠があるのかないのかよくわからないがそう確信している小学生の男の子の、親子のつながりを描いた作品(卵の緒)。もうひとつは、父親の愛人の息子と暮らすことになった女子高生の、異母姉弟という関係性にギクシャクしながらも絆を深めていく、日々の生活を描いた作品(7‘s blood)。
どちらも、家族の強い絆を描いている。1編目の作品では主人公が「自分は捨て子」ということを確かめるため、「へその緒見せて」と母に頼む。すると母は卵の殻をだし、「あなたは卵で産んだのよ」と、唖然としてしまうような返しをされる。主人公は、こうした母のあっけらかんとした、さばけた姿を受け入れている。「また適当なことを」と思いつつも、「この母ならほんとうに産みそうだ」と小学生らしい(?)解釈をする。それも親子の繋がり、絆が深いからこそできる解釈だと思う。へその緒だろうが卵の殻だろうが、親子のつながりは変わらない。人と人として繋がっているのだから、捨て子かどうかは大切なようでどうだっていい事なのだ。親子とはそんなものなのだろう。物質的なつながりだけで表現しきれない絆がそこにはあるのだと思う。
2編目では父親の愛人の男の子と一緒に暮らすことになった女子高生を主人公として、物語が進む。主人公は愛人云々ではなく、人として(子供らしくない子供として)出来上がっている小学生に、受け入れたくないという想いを抱く。人に好かれて、誰からもうっとうしく思われない「しっかりしている」様に、どうしても好きになれないモヤモヤした感情を抱く。しかし、実母の突然の死によって、「つながっている」ことは何より重要なことだと認識し、弟への接し方が変わっていく。献身的に会話や身の回りの世話をしてくれる弟が、たいせつでいとおしいものだと感じるようになる。主人公の誕生日に弟がプレゼントしようとするも、機会を失ってあげ損ねたケーキを「傷んでいてもいっしょに食べよう」と提案することからも、主人公の弟へのいたわりが伝わってくる。異母姉弟でも、実際の姉弟以上に姉弟らしい関係になれたことに、感動してしまった。
感謝や同調といったものが家族の間には流れている。その大切さ、かけがえのなさを再認識できた。家庭は世界に一つしかない。その大切さは、それを失ってから知っても遅い。これからは家族に献身的になれるような気になれた。いい作品に出会えたなぁと思う。読んでよかった。
ゆうき
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